お役立ちコラム
なぜセキュリティインシデント対応の仕事が注目されるのか?
はじめに
近年、サイバー攻撃や情報漏えいなどのセキュリティインシデントが増加し、企業や組織は迅速な対応と高度な知見を備える体制を求められています。
インシデント対応は、単なるシステム障害や情報漏えいからの復旧にとどまらず、事業継続や社会的信用の維持に直結する重要な取り組みであるがゆえに、担当者には大きな責任が伴い、組織全体の信頼性を左右する役割を担っています。
本記事では、セキュリティインシデント対応の仕事の重要性と、その仕事の内容について解説します。
セキュリティインシデントとは?攻撃から人為的ミスまで
定義と範囲
セキュリティインシデントとは、情報セキュリティにおける「機密性」「完全性」「可用性」の3要素が脅かされる事象全般を指します。具体的には、外部からのサイバー攻撃によるシステム停止や情報漏えいだけでなく、内部の人間によるデータの不正持ち出し、メールの誤送信、パソコンや記録媒体の紛失、さらには自然災害によるサーバーダウンなども含まれます。(参照*1)
つまり、意図的な攻撃だけでなく、偶発的な事故や過失によってセキュリティポリシーが守られない状態に陥った場合も、すべて「インシデント」として扱われます。
主なインシデントの種類
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)などが公表している事例を見ると、インシデントは大きく以下のカテゴリーに分類されます。
・マルウェア感染: ランサムウェアやウイルスによるデータの暗号化・破壊。
・不正アクセス: ID・パスワードの盗用や脆弱性を突いたサーバーへの侵入。
・Webサイト改ざん・DDoS攻撃: サービスの停止や偽サイトへの誘導。
・情報漏えい: 顧客情報や技術情報の流出(攻撃・内部不正・過失含む)。
・紛失・盗難: 業務端末やUSBメモリ、重要書類の紛失。
セキュリティインシデント対応の仕事の特徴
企業においては、これらの事象が発生した際に、被害を最小限に抑え、速やかに通常業務へ復旧させるための一連の活動が「インシデント対応(インシデントレスポンス)」となります。
専門性と確実性
セキュリティインシデント対応では、専門的な知識と確実な対処能力が求められます。情報漏えいやシステム破壊などの被害は、組織の信用失墜や法的リスクに直結するため、担当者には暗号技術やネットワーク構造、マルウェア解析、フォレンジック調査など多岐にわたるスキルが必要です。
また、発生したインシデントを復旧するだけでなく、根本原因を追究し、再発防止策を講じることも重要な役割です。
インシデント対応の現場では、手順や判断の遅れが企業活動全体の停止につながるリスクがあるため、どのタイミングでどのような手順を踏むかを明確に定めたインシデント対応計画(インシデントレスポンス計画)の整備が不可欠です。
さらに、事例やノウハウを組織内外で共有し、対応の質を高める仕組みづくりもポイントとなります。こうした業務には継続的な学習とアップデートが求められ、担当者の学習意欲やチームでの協力体制が成果を左右します。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公開している資料では、中小企業や小規模事業者においても、被害を最小化するための事前準備が重要であると明記されています。想定される脅威の洗い出しから復旧後の評価まで、幅広い知見が必要とされる点は、すべての規模の組織に共通する課題です(参照*1)。
また、こうした専門性の獲得には時間とコストがかかるため、社内の教育体制が不十分な場合は、外部の専門家やコンサルタントの支援を活用するケースも増えています。
現場での役割の重要性
インシデント担当者には、迅速な判断とアクションが求められます。システム障害や不正アクセスが発生した際、原因の特定だけでなく、ビジネスへの影響範囲の把握や関係部署・取引先との調整も同時に進める必要があります。
さらに、インシデント内容を社内外のステークホルダーに分かりやすく説明する能力も不可欠です。状況によっては経営陣や法務部門、外部のリーガルアドバイザーと連携し、法的側面も考慮した対応が求められます。
現場担当者がリーダーシップを発揮する場面も多く、復旧作業と並行して関連システムのアップデートやパッチ適用、従業員への教育研修を実施することもあります。加えて、予算管理や業務改善の提案など、経営と運用を橋渡しする役割も担うため、担当範囲は非常に広いです。
セキュリティインシデント対応は単独では完結せず、チーム内のタスク分担や階層的なサポート体制が重要となります。最終的には、企業全体のビジネス継続性を確保する責任を持つ部署として、信頼性の高い活動が期待されます。
公的機関と連携するメリット
組織のセキュリティレベルを維持し、適切なインシデント対応をするためには、社内のリソースだけでなく、外部の専門機関が持つ知見を活用し、連携することが近道です。
特に国や関連団体が提供する公的リソースは、中立かつ信頼性が高く、コストを抑えながら体制を強化する大きな助けとなります。
IPAの支援とガイドライン
セキュリティインシデント対応では、公的機関との連携が重要な役割を果たします。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、情報セキュリティに関する公的機関として、幅広い支援策やガイドラインを提供しています。2024年7月に公表された「中小企業のためのセキュリティインシデント対応手引き」では、インシデント発生時の対応を「検知・初動対応」「報告・公表」「復旧・再発防止」の3段階で整理し、具体的な手順や注意点を示しています(参照*2)。
このガイドラインでは、インシデント発生時に情報セキュリティ責任者への報告や、経営者への迅速な通知、対応体制の立ち上げ、役割分担の明確化、外部からのアクセス遮断や証拠保全など、実務的な初動対応が整理されています。さらに、影響が広い場合の公表や顧客窓口の設置、個人情報漏えい時の所管機関への届け出など、法令遵守や社会的責任にも配慮した対応が求められます。
復旧と再発防止の段階では、5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どうしたか)の観点で状況を整理し、原因調査や修正プログラムの適用、運用ルールの見直し、従業員教育などを実施します。自社での対応が難しい場合は、外部専門機関への依頼も推奨されています。
また、IPAは相談窓口を設けており、技術的な疑問から法的な懸念まで幅広い相談を受け付けています。中小企業では専門家を自社内に抱えにくい現状があるため、こうした公的機関の知見や支援を活用することで、事故の深刻化を防ぎ、円滑な復旧が可能になります(参照*1)。
JPCERT/CCとの連携
国内外で様々なサイバー攻撃への対応実績を持つ一般社団法人JPCERT/CCとの連携も重要です。
JPCERT/CCはCSIRT(コンピューターセキュリティインシデント対応チーム)の運用支援や情報提供を行い、日本におけるインシデント対応の中心的な役割を担っています。CSIRTは、インシデント発生時に被害を最小化し、迅速な復旧を実現するための専門チームであり、情報収集や技術的分析、関係各所への調整や連絡などを包括的に担います(参照*3)。
JPCERT/CCが公開するCSIRTガイドでは、インシデントの検知・報告、情報収集、原因追究、復旧・再発防止までの一連の流れが体系的に整理されています。CSIRTは組織内の複数部門が連携して機能する場合も多く、内部外部の信頼関係を構築し、情報共有を通じて迅速な対応を可能にします(参照*4)。
JPCERT/CCが公表した「インシデント報告対応レポート」(2025年1月1日~3月31日)によると、同期間のインシデント報告件数は10,102件、うち国内外の関連組織との調整件数は3,974件でした。フィッシングサイトが全体の87%を占め、Webサイト改ざんやマルウェアサイト、スキャンなどの事例も報告されています。特にフィッシングサイトの件数は5,267件と増加傾向にあり、サイバー攻撃が高度化・多様化している現状が示されています(参照*5)。
JPCERT/CCと連携することで、国際的な情報共有や最新の脅威情報の入手、多面的な対策の実施が可能となり、迅速なインシデント解決につながります。
おわりに
セキュリティインシデント対応は、企業や組織の事業継続を左右する重要な仕事として、今後も需要が拡大すると考えられます。高度な専門知識だけでなく、組織内外との調整力や法的視点まで総合的に求められる点で、非常にチャレンジングな分野です。
インシデント対応の現場は今後さらに複雑化する可能性があり、一人ひとりの意識と行動が組織の未来を支える力となるでしょう。
お知らせ
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