お役立ちコラム

初心者必見!情報セキュリティのリスクアセスメント進め方とは

はじめに

現代のデジタル社会では、企業活動から個人のSNS利用に至るまで、あらゆる場面で重要な情報がやり取りされています。これらの情報を安全に守るためには、情報セキュリティへの意識と具体的な管理体制が必要です。
初めて情報セキュリティに取り組む方は、何から始めればよいのか迷うこともあるでしょう。また、外部からの不正アクセスや内部不正など、新たなリスクも次々と現れています。

本記事では、情報セキュリティ対策の中心的な活動であるリスクアセスメントに焦点を当て、全体像から具体的な進め方までを順を追って解説します。

情報セキュリティとリスクアセスメントの重要性

情報セキュリティの役割

情報セキュリティとは、組織や個人が扱う機密情報や個人情報、業務上の重要データを保護し、リスクを最小化するための総合的な取り組みであり、これには、技術的対策や組織的な管理策、そして社員一人ひとりの意識向上が含まれます。

情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格であるISO/IEC 27001(JIS Q 27001)は、体系的に情報を守る枠組みとして広く知られており、多くの企業や団体がこれに準拠してセキュリティ水準の向上を図っています(参照*1)。
同規格では、運用手順やリスク管理のプロセスを標準化し、継続的な改善を通じて情報資産の機密性・完全性・可用性を維持することが求められます。

日本国内の多くの企業が採用する情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)は、このISO/IEC 27001の要求事項を組織に実装、具体化したものであり、組織的なセキュリティ対策の導入や教育訓練の推進に役立ちます(参照*2)。また、関連規格であるISO/IEC 27017はクラウドセキュリティ特有の要求事項を補足しており、クラウド環境の複雑化にも対応しやすいのが特徴です(参照*3)。

このように、情報セキュリティは技術的な観点にとどまらず、法令遵守や内部統制とも密接に関係しています。近年は、多様化したサイバー攻撃や情報漏えいへの関心が高まり、企業だけでなく公共機関や教育機関でも管理体制の強化が進んでいます。
情報漏えいが発生してから対応するのではなく、日常的にリスクを想定し未然に防ぐ体制を整えることが、情報セキュリティ対策の基本的な役割の一つです。

リスクアセスメントの位置づけ

リスクアセスメントとは、管理対象の情報資産に対して潜在的に起こりうる脅威や脆弱性を洗い出し、そのリスクの大きさを評価し、対応策を検討するプロセスです。

というのも、情報セキュリティの分野では、セキュリティ機器などの対策を導入するために、自社の情報資産がどのような危険にさらされる可能性があるかを分析することが不可欠だからです。
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)がまとめた『制御システムのセキュリティリスク分析ガイド』では、システムに潜むリスクを国際規格と比較しながら整理する方法が示されています(参照*4)。

リスクアセスメントの意義は、脆弱性を早期に特定し、優先度の高い問題から対策を講じることで、被害を最小限に抑える点にあります。
特に近年はサプライチェーン全体でのセキュリティ管理が求められており、組織内だけでなく協力企業や委託先の状況も把握しておくことが重要です。

さらにリスクアセスメントは、セキュリティマネジメントシステムの第三者認証(ISMS適合性評価制度)でも必須の取り組みとされ、組織がJIS Q 27001への適合を証明するための重要なステップとなっています(参照*1)。
情報セキュリティにおけるリスクアセスメントは、各種対策を効果的に選択し、運用コストを抑えながら事故を予防する基盤となります。

リスクアセスメントの実践プロセス

目的定義と範囲策定

リスクアセスメントを進めるうえで最初に重要となるのが、目的の明確化と対象範囲の具体的な設定です。組織全体のシステムやネットワーク、または特定の部署やサービスごとに、どこまでを保護すべき情報資産と見なすかを明確にします。ここで曖昧さが残ると、後の工程でリスクの把握が不十分となり、対策の抜け漏れが生じやすくなります。

米国NIST(米国国立標準技術研究所)の発行する「リスクアセスメントの実施の手引き 」では、組織全体・ミッションや業務プロセス・具体的な情報システムの三層でリスクを管理する必要性が強調されています(参照*5)。まずは自社のビジネス目標や法的要件に照らして、どの層を優先的に評価すべきかを決めることがポイントです。クラウドサービスや外部連携が多い場合は、接続点やデータの流れに着目し、影響範囲まで明確にしておくことが求められます。

脅威と脆弱性の洗い出し

次に行うのが、脅威と脆弱性の洗い出しです。
脅威とは、組織の情報資産に損害を与える可能性のある存在や事象を指し、例えばマルウェア感染やサービス拒否攻撃、物理的な侵入などが挙げられます。
一方、脆弱性はセキュリティ上の弱点や欠陥を意味し、運用ルールの不徹底や未更新のソフトウェア、アクセス管理の不備などが具体例です。

これらを一覧化する際には、既存システムのドキュメントや監査レポートを活用し、現場担当者へのヒアリングも行うと効果的です。

IPAの資料によれば、システムに対してはネットワーク経路の単純化や物理的隔離の検討が推奨されており、リモート監視システムなど新たな機能を導入している場合には、その周辺で発生し得る脆弱性を詳細に検証する必要があります(参照*4)。
このように、業務環境や技術的背景を踏まえながら、脅威と脆弱性の関連性を丁寧に洗い出すことで、リスクアセスメントの実効性が高まります。

リスク評価とリスク対応策の検討

脅威と脆弱性を把握したら、それぞれがもたらすリスクの大きさを評価し、対策の優先度を設定します。
評価では、リスクが現実化する確率と、その影響度(財務的損失や事業継続への影響など)を掛け合わせて、危険度を算出する方法が一般的です。危険度が高いと判断されたものから優先的に対応策を検討します。例えば、ネットワークセグメントの再設計、アクセス権限の見直し、緊急時対応マニュアルの整備などが挙げられます。

ISO/IEC 27001および関連するISO/IEC 27002では、リスク対応策をを選定する際の基準として、適用宣言書(どの対策を採用し、どの対策を不採用としたのかを網羅的に示した文書)を作成し、どの対策を実施するか、または見送るかの理由を明確に示すことが求められています(参照*2)。実施結果は文書化し、内部監査や外部監査に備えて検証可能な形で残すことも推奨されます(参照*3)。こうした取り組みを着実に行うことで、リスク評価の成果が日常業務の効率化や信頼性向上につながります。

実務での運用と継続的改善

リスクモニタリングの活用

リスクアセスメントによって設定した対策は、一度導入すれば永久に効果を発揮するわけではありません。環境の変化や新たな脆弱性の発見に応じて、リスクの状況は常に変動します。そこで重要となるのが、定期的にリスクをモニタリングする仕組みです。ログ監視や脆弱性スキャナの活用など、継続的な観察体制を整え、小さな兆候も見逃さずに取り組むことが求められます。

内部監査を含む監査手続きでは、実装している管理策が当初の目的どおりに機能しているかを点検し、必要に応じて修正案を出します(参照*3)。クラウドサービスを利用している場合には、サービス提供側が提示する監査報告書を確認することで、想定外のリスクが潜んでいないかを継続的にチェックできます。こうしたモニタリングと監査のサイクルを繰り返すことで、組織は自らの防御態勢を最新の脅威に合わせて適宜強化できます。

継続的評価とPDCAサイクル

リスクアセスメントは一度実施して終わりではなく、PDCA(計画・実行・確認・改善)サイクルの中で定期的に再評価するプロセスとして位置づけられます。特に、情報セキュリティの脅威は時間の経過とともに変化するため、導入済みのコントロールが時代遅れとなることもあります。定期的なリスク評価と対策の更新を組み合わせることで、組織は常に最適なセキュリティレベルを維持できます。

ISO/IEC 27001が求める継続的改善プロセスの一環として、外部監査やマネジメントレビューの結果をもとに組織全体のセキュリティ方針や手順を改訂することも行われています(参照*2)。また、NISTのガイドラインでも、組織のミッションやビジネス上の変更に合わせてリスクアセスメントを見直す重要性が示されています(参照*5)。このような継続的なプロセスを実務に落とし込むことで、セキュリティ対策は現場にも浸透しやすくなり、費用対効果の高い形で組織を守る基盤となります。

おわりに

情報セキュリティとリスクアセスメントは、組織の安定運営や社会的信頼の維持に不可欠な要素です。特にグローバル化やデジタル変革が進む現代では、セキュリティ体制を強化することで、新たなビジネスチャンスを生み出す可能性も高まります。

本記事では国際規格のISO/IEC 27001やIPA、NISTなどが示す具体的なガイドを参考に、リスクアセスメントの意義やプロセスを整理しました。読者の皆さまには、初めて情報セキュリティに触れる方も、すでに知識をお持ちの方も、この機会に自組織のリスクを点検し、継続的な対策を検討するきっかけとしてご活用いただければと考えています。

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