お役立ちコラム
セキュリティエンジニアのための年収アップ戦略。フリーランス転向についても解説
セキュリティエンジニアは、デジタル時代の守護神とも言えます。
企業や組織が直面する脅威から情報を保護し、信頼性の高いシステムを構築する彼らの役割は、今やビジネス成功の鍵となっています。しかし、この重要な役割にも関わらず、多くのセキュリティエンジニアは自身の市場価値を最大限に活用できていないのが現状です。
この記事では、2024年にセキュリティエンジニアとして年収を上げるための具体的な方法やメリットなどを探ります。
最新のトレンドを把握し、求められるスキルを身につけ、効果的なキャリア戦略を立てることで、あなたの市場価値を高め、収入を増やす機会をつかみましょう。
■ 監修者:鐘ヶ江直志
エンジニア歴10年。通信業界を中心にオンプレミス・クラウド領域におけるインフラ・サーバー・セキュリティ設計構築等に従事。
また、ライターとしてエンジニア学習サービスの講座・教材製作や電子書籍出版など様々なプロジェクトに携わる。
【出版物】
- 「AWS認定資格 クラウドプラクティショナーの教科書: 合格へ導く虎の巻 CloudTech制作委員会シリーズ Kindle版」
- 「AWS認定資格 ソリューションアーキテクトアソシエイトの教科書: 合格へ導く虎の巻 Kindle版」
目次
セキュリティエンジニアの市場環境と年収相場
セキュリティエンジニアの市場環境と年収相場について、先に触れておきましょう。
市場環境
IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が発行している『DX白書2023』によると、IT人材は需要に供給が追いつかず、セキュリティ人材は自社育成より外部調達が多い状況です。
このことから、セキュリティ人材不足は今後も継続すると思われます。これからセキュリティエンジニア業界に入っていく方も、すでにセキュリティエンジニア業界で活躍されており、さらなる飛躍を期待する方にも、良い条件が揃っていると言えます。
セキュリティエンジニアの案件内容は多岐にわたりますが、公開案件の多くは、下記の4種類に分類されます。
- プレーヤーとして実際に手を動かす「セキュリティエンジニアポジション」
- プロジェクトマネジメントやプロジェクトをリードするような「PM・PLポジション」
- 技術選定や他のエンジニアを牽引する経営陣との橋渡しを担う「テックリードポジション」
- 経営陣との橋渡しを担う「コンサル・CISOポジション」
参考:IPA|DX白書2023
年収相場
経産省が2017年に発行した調査資料(IT関連産業の給与等に関する実態調査結果 p.6)によると、「IT技術スペシャリスト(特定技術(DB・NW・セキュリティ等))」の給与水準は758.2万円です。セキュリティエンジニアにおいても概ね同じと考えてよいでしょう。
また、求人検索エンジン「求人ボックス」で「セキュリティエンジニア フリーランス」の検索結果の平均月給が62.9万円であることから、フリーランスの年収は700万円~900万円がボリュームゾーンと考えられます。
なお、年収はプロジェクト内容・スキル・年齢などによって変わってきます。
(参考)ポジション別想定月単価
- セキュリティエンジニアポジション:600〜840万円
- PM・PLポジション:840〜1440万円
- テックリードポジション:840〜1440万円
- コンサル・CISOポジション:1200万円〜
コンサルタントやCISOポジションの案件では、ひとつの案件が0.3人月前後、報酬は80万円くらいで設定されているものも存在します。そのため複数の案件を担当することで、月収200万円を超えるケースもあります。
参考:経済産業省|IT関連産業の給与等に関する実態調査結果
セキュリティエンジニアの仕事の平均年収は450万円/平均時給は2,486円!給料ナビで詳しく紹介|求人ボックス
2024年のセキュリティ案件トレンド
2024年現在、大きくふたつの案件トレンドが見て取れます。
ひとつ目は、出社条件の案件が多数を占める点です。求人ボックスにて「セキュリティエンジニア フリーランス」をキーワードに検索してみたところ、2024年3月時点で191件の案件がヒットしました。そこから「フルリモート」で絞り込み条件を加えたところ、33件に減少したことから読み取れます。
ふたつ目は、「Linux/Windows」「AWS」「Network」など、特定分野でのセキュリティ実装・テスト・コンサル案件が増えてきているという点です。以前は「インフラ全般」や「クラウド技術」のように含みを持たせた案件が見られましたが、近年は特定分野の知見を活かして客観的な診断と処置を施してほしいという企業のニーズが見て取れます。
技術領域や、案件内容が細かく開示されているため、過去に関連する分野での開発や保守運用に携わったことがあれば、そこで培った経験やノウハウを活かすことが可能となります。このことから、セキュリティエンジニアとしての業務経験が浅くとも、セキュリティエンジニアリング案件に挑戦できる環境が増えてきたと言えるでしょう。
セキュリティエンジニアのおすすめキャリアプラン
エンジニアが年収をあげていくにはキャリアプランの作成が重要です。エンジニアはIT業界での就業経験や専門的な知識が求められるほかリーダーシップや戦略的思考能力も高く評価されます。
そこで本段落では、ゼロからキャリアを歩むためのおすすめキャリアプランについて、セキュリティエンジニア職を意識しながらご紹介します。
ステップ1.システム開発・保守運用経験を積む
まずは実務経験を積んでいきます。
すでにIT業界に身を置いている方であれば、現在携わっているプロジェクトで使用する技術領域の知識をさらに深掘りすることで自身にとっての専門領域・得意領域をつくることができます。
IT業界が未経験の方は、自身でアプリ開発やローカル環境にクローンサイトを構築して、それをハッキングしてみるとよいでしょう。
それらをGithubや自身の技術ブログ等で公開することで、システム開発経験に近い評価を得ることが期待できます。
ステップ2.セキュリティ関連の資格を取得する
資格を有することで、社内外に専門知識を持っていることをアピールでき、また、実務にも大いに役立ちます。
エンジニアはクライアントと直接やり取りを行い、セキュリティ関連の質問を受けることがあります。その際に、適切に回答できないとクライアントの不安を招きます。信頼されるセキュリティエンジニアとしてキャリアアップしていくために、資格の勉強をして知識を増やしていくことは有効です。
※資格の詳細は後述する「セキュリティエンジニアに需要のある資格」にて解説します。
ステップ3.セキュリティ案件に挑戦する
正社員の場合
案件には様々な内容の案件がありますので、慣れないうちは自身の専門分野に特化した案件に挑戦するとよいでしょう。まずはセキュリティ関係のプロジェクトに参画することが第一目標です。
正社員の場合は実績と経験をもとに、セキュリティ関係のプロジェクトに参画できるよう上司に相談してみると良いでしょう。その際、セキュリティ関係のプロジェクト経験が浅い場合は、作業者(ワーカー)レベルから参画することをおすすめします。このレベルから参画することができれば、実際に手を動かしながら、セキュリティ案件の雰囲気や、顧客が求めているものについて理解を深めることができます。
フリーランスの場合
フリーランスであっても、プロジェクトへ参画する際のポイントは大きく変わりません。経験が浅い方は、セキュリティエンジニアとしての立ち回り方を先輩エンジニアから学べる環境が望ましいので、案件内容とポジションは確認してから応募するようにしてください。
ただし、フリーランスは、即戦力が求められますので、そもそも経験が浅い方(もしくは未経験者)が参画できる案件は少ないのが現状です。
もし募集要項に「開発経験あればセキュリティエンジニアとしての経験は問わない」などの条件が記載されていれば、他の条件(報酬面やリモート可否など)は多少目を瞑って、経験値をとることを検討してみてください。
例えば、エージェントサービスを利用して、エージェントと相談しながら参画する案件を選定するのもおすすめです。特にcyseekはセキュリティ企業のGSXグループが運営しているセキュリティ案件特化型のエージェントサービスですので、キャリアの相談相手としても心強いでしょう。(カジュアル面談の内容はこちら)
ステップ4.PL(プロジェクトリーダー)・PM(プロジェクトマネージャー)へステップアップする
複数のプロジェクト経験を積み、業務内容を理解したら、PLやPMへのステップアップ時期と考えて良いでしょう。
PL・PMポジションの案件は半年〜数年単位のプロジェクトが多く、セキュリティエンジニアとしての価値が高まる実績となります。フリーランスであれば、案件単価も月80万円〜と高単価が期待できます。
一方で、業務における守備範囲も広くなります。顧客折衝やベンダーコントロール、プロジェクト全体のスケジューリングなどのマネジメント業務に割く時間が多くなりますので、効率的な働き方が求められてきます。
そのため、PMPやプロジェクトマネージャー試験など、マネジメントに特化した学習をおすすめします。
セキュリティエンジニアに需要のある資格
セキュリティ業界は常に進化しており、それに伴いセキュリティエンジニアに求められるスキルセットにも変化が見られます。クラウド、AIを活用した脅威検出、自動化されたセキュリティ対策などのトレンドを理解し、関連する知識を深めることは、セキュリティエンジニアとしての市場価値を高める上で不可欠です。
ここでは、セキュリティエンジニアとしての知識を深めるために役立つ資格について解説します。
なお、より具体的な資格情報について知りたい方は、こちらの記事も併せてお読みください。 セキュリティエンジニアにおすすめの資格17選|種類別の資格や難易度まで解説 昨今、企業に対するサイバー攻撃が増加しており、それに伴い情報セキュリティの重要性は高まっています。そのためセキュリティエンジニアの市場価値は高まり、セキュリティ資格への注目も増しています。 しかし、セキュリティ資格は多数・・・
セキュリティ全般
セキュリティ全般の知識を体系的に学ぶには、CISSPやCISMの取得を目標に学習をすすめるとよいでしょう。いずれも、情報セキュリティ業界では有名な資格であり、試験内容も実務に即しているため業務にいかしやすいのが特徴です。
しかし、情報セキュリティという関係上、ITシステムやプロジェクト進行について、ある程度の知識や経験が求められます。そのため、IT業界歴が浅い方や未経験の方はCompTIA Security+を先に取得するのがおすすめです。CompTIA Security+は、情報セキュリティの基礎知識に焦点を当てた入門レベルの資格で、幅広くセキュリティトピックをカバーしています。
特定分野・ベンダー系資格
セキュリティエンジニアとして、専門性を高め、市場価値を高めたいのであれば、特定分野やベンダー系の資格が効果的です。すでに特定分野・専門分野が決まっているのであれば、その分野にでサービスを展開するベンダーのセキュリティ系資格を取得するとよいでしょう。
もし、現時点で分野が定まっていないのであれば、クラウドやインフラ系のセキュリティ関連資格がおすすめです。クラウドについては、AWS・Azure・Google Cloudそれぞれ、セキュリティスペシャリストの資格が用意されています。
いずれも、基本的なアーキテクチャ資格相当の知識がある前提で出題されますので、これらの資格に挑戦する際には、アーキテクチャ資格のアソシエイトレベル、できればプロフェッショナルレベルまで取得した後に挑戦してみることをおすすめします。AWSならAWS認定ソリューションアーキテクト、AzureならAzure Solutions Architect Expert、Google CloudのProfessional Cloud Architectがあります。
また、クラウド系資格同様に、サーバーやネットワークに関してもセキュリティに特化した資格が用意されていますので、それらの資格を組み合わせることで、希少性をさらに上げることができます。
セキュリティエンジニアとして最終的に目指す方向性
エンジニアがさらなる高みを目指すとしたら、最終的に目指す方向性は大きくわけて2パターンです。
1つは、ゼネラリストとしてのステップアップ、もう1つはスペシャリストとしてのステップアップです。どちらも挑戦しがいのある、とても高いハードルですが、その先には大きな報酬と安心・安定を得られる可能性があります。
ゼネラリスト
セキュリティ全般の幅広い知見を持ち、組織全体のセキュリティ戦略をリードする役割を担うのがゼネラリストです。
組織の責任者という職務はその性質上、外部の人材に任せることは少ないため、フリーランスでゼネラリストを志向する場合はPM・PL層やコンサルタントとして活動することになります。
フリーランスの案件としては、一つの案件に0.1〜0.3人月くらいの工数で参画し、それを複数社掛け持つといったサポート系のものがあります。一つの案件が50〜80万円というケースも多く見受けられますので、やり方次第では年収2000万円オーバーというのも実現可能です。
最新のITトレンドに精通し、経営者視点でシステムやプロダクトを監査できる知識と経験が身についていれば、ゼネラリストを目指す準備が整ったといえるでしょう。
スペシャリスト
特定分野で誰よりもセキュリティに関して熟知している人物がスペシャリストです。特定分野というのは、いち企業のシステムでも、Webサービスでも構いませんし、AWSやLinuxなどの特定領域でも構いません。「ここの領域では自分の右にでるものはいない」という存在がスペシャリストです。
企業のサービスやシステムに精通したスペシャリストであれば、中長期的にプロジェクトにアサインされやすいです。また、フリーランスであれば、同じような構成のシステムに関する実績があれば、即戦力として高単価で迎えられます。
AWSやLinuxなどの特定領域のスペシャリストであれば、執筆活動やセミナー・ワークショップなど案件以外の活動の選択肢も増えるので、業界内での知名度の向上やマルチインカムが期待できます。
スペシャリストを目指すのであれば、特定領域について常にトレンドを先取りしていきましょう。
エンジニアがフリーランスに転向するメリット・デメリット
「より多くの業務経験を積み、エンジニアとしての価値を高めたい」
「収入をアップさせ、ワークライフバランスを充実させたい」
「会社の看板ではなく、自分というブランドで勝負をしてみたい」
といった理由から、エンジニアが正社員からフリーランスへ転向するケースは珍しくありません。
多様化した生活スタイルや、価値観のなかで、正社員という生活スタイルに窮屈を感じてしまう方には、フリーランスというのは最適な選択肢の一つといえるでしょう。
もし、ご自身のスキルや人脈に自信があり、この先ワークライフバランスを充実させていきたいと考えるのであれば、下記メリット・デメリットを参考に、フリーランスへの転向を検討してみてください。
メリット
高収入が期待できる
企業側にとっては、正社員を雇用する際に継続的に発生するコスト(社会保険料など)がかからないため、同じ業務内容であれば、正社員と比較して高単価になる傾向にあります。
案件選択の自由度が高い
正社員の場合は、組織の意思決定が強く反映されるため、個人の意見が通らない場合があります。しかし、フリーランスであれば、自己責任のもと案件を選択することができるため、その点に関しては大きなメリットといえるでしょう。
自由にワークライフバランスを調節できる
服装・働き方・労働時間などが正社員よりも自由がきくのは、フリーランスの大きな魅力でしょう。リモート可能な案件も増えてきているので、生活拠点を地方に移したり、旅先での就労も可能となります。
デメリット
金融系の審査に通りづらくなる
フリーランスという働き方が社会に浸透したとはいえ、まだまだ社会的信頼は正社員よりも低いのが現状です。フリーランスに転向する前にカードやローンなどの審査を通しておくなどの計画性が必要となるでしょう。
収入面での安定性に欠ける
定期的な収入が保証されていないフリーランスは収入面において安定性が低くなってしまいます。フリーランス転向の前に、当面の生活資金を用意しておき、複数の案件を並行したり、Webライターなどの副業を通じて複数の収入源を用意しておくと安心できます。
案件以外の業務が多い
フリーランスになると、営業活動や経費精算などの業務を自分一人で対応する必要があります。経理・営業など本業以外の業務はアウトソースする選択肢があることも念頭に置いておきましょう。
フリーランスへの転向は大きな決断となるため、メリット・デメリットを知っていても決断が難しいという方もいらっしゃるでしょう。cyseekではそういったお悩みをお持ちの方に向けたカジュアルな面談サービスもご用意しています。お気軽にご相談ください。(カジュアル面談の内容はこちら)
セキュリティエンジニアとして年収をあげていくために
最後の章では、セキュリティエンジニアとして、どのように年収をあげていくかについて解説していきます。正社員・フリーランス問わず、年収アップにつながるポイントに触れていきますので参考にしてみてください。
差別化する
エンジニアは技術力・知識力・経験値で相対的に評価されます。最初は特定分野を集中的に極めていき、徐々に他分野にも専門性を拡張しながら守備範囲を広げていくという成長方法が一般的です。
セキュリティエンジニアとして差別化を図るためには、脆弱性や情報漏れなどに対処できる技術習得が必要でしょう。情報セキュリティについて幅広く対応できる知識量があれば、単価の高い案件や数年単位の長期スパン案件に参画することも可能となります。そのために、資格取得や書籍学習、多種多様な案件に参画し業務経験を積むことなどが重要となります。
人脈を形成する
年収UPを目指すうえで、人脈形成は重要です。経営者層やテックリードエンジニア、決裁権をもつ重要人物などとつながることができれば、案件への参画や、良質な情報の収集にも役立ちます。
そのためにも、IT関連のコミュニティへ積極的に参加することをおすすめします。大小・有料無料あわせて沢山のコミュニティが存在していますが、特定の資格所有者のみが参加できるコミュニティへの参加は特におすすめです。
PMPやプロジェクトマネージャー試験、E検定のような難易度が高い資格を参加条件に設定しているコミュニティでは、大手企業のIT担当やスタートアップの経営者・CTOなどが参加していることもあります。コミュニティに参加する目的としても、高難易度の資格取得を狙うのはおすすめです。
セルフブランディングする
差別化・人脈作りに加えて、セルフブランディングも年収UPに効果的です。
セルフブランディングとは、特定領域・技術に特化した権威性のことで、「Windowsならタナカさん」「大規模なトラフィックをさばくWebアプリならスズキさん」のように、「○○といったら××」というイメージを作ることです。
自身のブランディングがしっかりと形成されていれば、特定分野での権威性があがり、案件獲得や人脈形成におおいに役立ってくれます。ブランディングを行うにはいくつか方法がありますが、特におすすめなのが情報発信です。
SNSや、自身の技術ブログなどでの発信は、特定分野での権威性を向上させ、セルフブランディング形成の一助となるでしょう。
年収アップの鍵は継続的な成長
セキュリティエンジニアとして年収を上げるためには、技術の急速な進化に伴い、継続的なスキルアップと資格取得が必要です。
市場で求められるスキルを習得し、関連資格を取得することで、あなたの市場価値は大幅に向上します。また、明確なキャリアプランの構築、人脈形成、そしてパーソナルブランドの構築が成功への鍵です。さらに、継続的な学習と自己投資によって、技術革新の波に乗り遅れることなく、キャリアを通じて高収入を実現することができます。
読者が本記事の内容を活用し、自らのキャリアと収入の向上につなげることを願っています。